163. 空白になった
■例文 三島由紀夫 「金閣寺」
私は完全に、残る隈(くま)なく理解されたと感じた。私ははじめて空白になった。その空白をめがけて滲(し)み入る水のように、行為の勇気が新鮮に湧き立った
私は完全に、残る隈(くま)なく理解されたと感じた。私ははじめて心地よくなった。その空白をめがけて滲(し)み入る水のように、行為の勇気が新鮮に湧き立った
◇ラピュタ
■違い
「空白になった」のほうが、何も言うことのないほど、感動している感じ。
自分の言いたいことと、相手の言葉とが、ぴったりと重なったときは、心地よくなって満たされて、ボーっとしてしまう。それを「満たされた」と表現するのでなくて、ここでは逆に、「空白になった」としていて、これのほうが、感動で静止している様子が伝わると思った