9. 瘴気が立ち籠める
■例文
虚無主義の瘴気が立ち籠める
虚無主義の臭いが立ち籠める
■違い
「瘴気(しょうき)が立ち籠める」という言葉を見ると、ペストを思い出す。中世ヨーロッパ時代の密集した不衛生な街。治る見込みのない病気。不潔と絶望を感じる。この例文でいうと、「虚無主義は汚らわしいもので、これが招来されるとたちまちダメ人間の出来上がり。最悪の代物だよね」という感じが込められている。「瘴気」の意味は、「熱病を起こさせる山川の悪気」。
一方、「臭い」という言葉は、幼稚な感じがする。よく使われる凡庸な言葉だから。
おそらくこれから、難解な語彙をたくさん収集するだろうと思う。難解な語彙を収集するときに、ぼくが意識している基準は、具体的な事物を想像させるような語彙であるかどうか、ということ。例えば、今日の例文の場合は、「瘴気」という言葉。この言葉は読み手に、紫色の気持ち悪い空気が流れている場面を想像させる。難解な語彙だったら何でも良いというわけでない。読み手の想像を誘発させるような語彙でないといけない。小論文や論述試験では難解な語彙や表現を使うべきでない、ということが言われている。しかし、今述べた基準に従って、ギリギリのラインで勝負してみるのも面白いと思う。少なくともぼくはそのラインを滑走する。