98. すべりだしてくる
■例文 三島由紀夫 「美と共同体と東大闘争」
観念の世界に生きていながら、ものというものに接触しているうちに、作品というものがすべりだしてきてここへ出てくるということだろうと思うのだ。もし作品の世界でみんな自立できてたら、退屈だけれども一番しあわせで、それを一番夢見たのはぼくはフローベルだと思うね
観念の世界に生きていながら、ものというものに接触しているうちに、作品というものがはみ出してきてここへ出てくるということだろうと思うのだ。もし作品の世界でみんな自立できてたら、退屈だけれども一番しあわせで、それを一番夢見たのはぼくはフローベルだと思うね
■違い
「すべりだしてくる」という言葉のほうが、水の上を静かに船がくるように、いつのまにか静かに来ているという感じがある。
どういう風に使えるか。たとえば、「ぼくは道徳的潔癖を固守した。しかし、あまりにもちーちゃんを思う気持ちが強すぎるせいかいつのまにかそれがすべりだしてきて、ついに彼女に話しかけるという事件を引き起こしたのである」とか。