82. 同一の現象が見られる

■例文 ショーペンハウエル
 文学においても、人生におけると同一の現象が見られる。どちらを向いてもいたるところにひしめいて、まるで夏のハエのようにすべてのものを汚す、度し難き俗衆にぶつかる。
 文学においても、人生において出会う現象と同じものが見られる。どちらを向いてもいたるところにひしめいて、まるで夏のハエのようにすべてのものを汚す、度し難き俗衆にぶつかる。

■違い
 「おけると」という言葉を使うほうが、短くまとめられる。
 短くまとめれると何がいいのか?それは、「人生の現象」というふうに頭の中で短く意味をまとめて、簡潔な字面をイメージすることができるので、それが文を読み進めるうえで、理解を助ける記号になる。
 「同じもの」だと、ものの中には、現象であったり性質であったり、いろんなものがあるだろうから、頭がいい人じゃないとすぐに共通点をピックアップできない。
■物事の捉え方
 例文ではまず、文学と人生の共通点を見つけようとしている。そのときに、ある一つの文学作品の内容に焦点をあてるという方法を採用していない。焦点をあてているのは、文学という学問自体が人類の中で継続していくときに直面する問題に対してである。つまり、個別のものではなくて、一つ次元の上がった大きなもの、個別なものを総括するようなものに焦点をあてている。これに従っていくと、例えば、空と地面の現象の共通点は?というのは正しくて、雲と石の現象の共通点は?というのは間違いになる。なぜなら、その現象の共通点を、「あるときに何もかも巻き込んでまき散らす撹乱作用が起きる(台風のこと)」というふうにしてみると、空と地面にとっては、それは自分の中の一部で起きる。しかし、石と雲にとっては、自分の全てを巻き込む全体として巻き起こる。つまり、個別のものではなくて、より大きな全体的なものに焦点をあてないと、現象を確認できない。
 今日から、「言い回しの型を適用するときの挿入法」というのを考えていくことにしてるのだけど、そもそも、挿入法というのは、「言い回しの型を使うときに、〜に挿入する言葉はどのような言葉にしたらいいか」ということ。具体的に言えば、「〜においても、〜おけると同一の現象が見られる」という言い回しの型を使うときには、〜というところにはどのような種類のものを挿入するかということ。ここで、「金においても、りんごにおけると同一の現象が見られる」と挿入してしまうと、おかしな感じがする。なぜかといえば、金の現象、りんごの現象、なんて言葉はちょっぴり変だから。そこで正しくは、「金の運用においても、りんごの生産におけると同一の現象が見られる」といった具合で、動きを表す言葉を挿入しなければならない。したがって、ここでの挿入法は、動きを表す言葉をいれないといけない、ということ。
■言い回しの型
 〜においても、〜おけると同一の現象が見られる
■使用法
▲着眼
 共通の現象
▲挿入
 できるだけ全体性のあるものを入れる。たとえば、雲、石ではなくて、空、地面。
 動きを表す言葉をいれないといけない。たとえば、金、りんご、ではなくて、金の運用、りんごの生産。
▲効果
 意味をまとめて簡潔な字面をイメージできるので、それが文を読み進めるうえで、理解を助ける記号になる。
 現象に着目することで、より早く共通点を見いだせる。