93. 敵にすることに決めたんです 

■例文 三島由紀夫 「美と共同体と東大闘争」
 それで私はとにかく、共産主義というものを敵にすることに決めたんです
 それで私はとにかく、共産主義というものを否定することにしたんです

■違い
 「敵にすることに決めたんです」のほうが、闘っている感じがある。肉体的
 いきなりちょとつに、「資本主義」という大きな思想の体系を敵にすると宣言している。ここには、論理の飛躍がある。論理の飛躍があるところに、笑いというものがある。ホッブスが「リヴァイアサン」の中で言ったけれども、「笑いは他者の中にある不格好をみて、自分をとつぜん称賛することによって引き起こる」と。自然でないことがあれば、笑いが起きるわけで、論理性を重視する人間においては、論理の飛躍した言動は自然でないので、笑いがくるはずである。
 どのような場合に使えるかというと、たとえば、「貧乏なぼくは、金持ちの友人をもつことができない。なぜなら、一緒に買い物に行けるほどの資力がないからだ。それでぼくはとにかく、資本主義というものを敵にすることに決めたんです。だから、経済学を勉強していないのだ」とか、「友達がたくさんいる人は、明るい人が多い。しかし、ぼくのような人種を前にすると、サッと笑顔が消えて、侮蔑のまなざしがくる。それでぼくはとにかく、人気主義というものを敵にすることに決めたんです」。