94. 生産的な機関

■例文 トーマス・マン 「ヴェニスに死す」 
 自分の内部にある生産的な機関の不断の振動を、昼食後にもやはり制止することができなかった
 自分の内部にある熱いものの不断の振動を、昼食後にもやはり制止することができなかった

■違い
 若い時は、余分なエネルギーが有り余っている。したがって、僕もこのブログの作成には、顔を真っ赤にしながら懸命に取り組んでいるのだけれども、「自分を動かしている情熱をどう表現したらいいのか」、これは青年期における一つの課題である。
 「生産的な機関」という言葉からは、歯車が回っている様子が思い浮かぶ。天空の城ラピュタのOPの機械文明の映像みたいな。ホッブスは「リヴァイアサン」の中で、人間のことを自動機械だと言ったけれども、そこでは、人間の心臓はバネで、神経はヒモで、関節は歯車だ、ということを言った。それと同じように、「生産的な機関」というと、あたかも自分の体の中に、エネルギーの増産をつかさどる風車のようなものがあるかのような思いをする。「熱いもの」というように、連想の利かないような抽象的なものよりも、「生産的な機関」というように機械を連想させるものにしたほうが良い。なぜといって、科学によって支持されれば、それは説得力をますから。
 そして、「熱いもの」とか「情熱」とかいう言葉は、使い古された言葉であるので、刺激がない。